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良性発作性頭位めまい症(BPPV)


良性発作性頭位めまい症(BPPV)|頭をうごかしたとたん“世界が回る”めまい

良性発作性頭位めまい症とは
良性発作性頭位めまい症(BPPV)は、特定の頭の向き・体位をとった瞬間に起こる回転性のめまいが特徴の疾患です。
内耳の耳石(カルシウムの微小結晶)が本来の場所(耳石器)からはがれて半規管内(下の図を参照)に入り込み、頭位変化のたびにバランスを取るための前庭感覚細胞が過剰に刺激されることで、脳へ“誤った動きの信号”が送られて発作が起こります。
発作は数秒〜1分でおさまることが多い一方、同じ体位をとると繰り返すのが典型です。


症状の特徴と起こりやすい動作
代表的なのは朝の起き上がり、寝返り、上を向く/下を向く、素早く振り向くといった場面で生じるぐるぐる回る感覚です。
耳鳴り・難聴を伴わず、じっとしていれば短時間で自然軽快しますが、頭を動かすとまためまい発作を繰り返します。
めまい発作を何度も繰り返していくうちに、数日以内にめまい症状は自然と治まっていきますが、ふわふわした感覚がしばらく持続することがあります。

起こる仕組み(耳石と半規管)
内耳の耳石器は重力・直線加速度を感じるセンサーで、表面にある耳石が動くことで情報を伝えます。加齢や頭部への軽い外力、安静臥床が続くなどの要因で耳石がもろく・はがれやすくなり、半規管内へ迷入すると、頭位変換のたびに内リンパ流の乱れ→異常な眼球運動(眼振)→回転性めまいを引き起こします。

起こりやすい方・関連因子
好発は50〜70代、女性にやや多いとされます。
片頭痛を持つ方、長期臥床や寝不足、脱水が続く場面で誘発されやすく、更年期以降は骨密度低下・エストロゲン変化が関与して再発しやすいことが知られています。
睡眠時に片側を下にしてばかり寝る癖も、同側半規管で誘発される一因になり得ます。

診断(問診と眼振検査)
問診でめまいの誘発される場面を詳しく確認します。
診断には、「眼振」という、目の動きが非常に需要となります。目を拡大して眼振の動きを記録するためのフレンツェル眼鏡(暗いゴーグル)を付け、少ししんどいですが頭を動かして(頭囲変換)眼振が誘発されるかを記録します。
頭位変換で原因半規管(後半規管/外側半規管など)を推定し、適切なリハビリや治療につなげます。
難聴・ふらつきが長引く・神経症状を伴う場合は、他疾患(前庭神経炎、中枢性めまい等)を鑑別します。

治療(頭位治療/薬の位置づけ)
根本的な治療として頭位治療(リポジショニング法)があります。代表はEpley法/Semont法/Lempert法などで、耳石を本来の部屋へ戻す一連の頭位操作を行います。しかし、この方法は正確に原因半規管の場所を特定することが必要不可欠であり、めまいを専門に行う施設で施行されることが望ましいとされています。
そのため当院では、BPPVの治癒を助けるリハビリの指導や、薬物療法などを中心に行っております。
内服療法(ベタヒスチンなど)は補助で、発作時の気持ち悪さ・吐き気の緩和には有用です。また、激しいめまい発作が落ち着いた後も、ふわふわとした感覚(浮動感)がしばらく持続することが多々あります。そのような慢性的な症状を緩和するための内服薬も行っております。

日常生活での対処(発作時と軽快期)
発作時は、頭を少し動かすだけで激しいめまいが襲ってきます。まず安全な体勢で座る/横になり、一点凝視または目を閉じて安静にすることが重要です。強い吐き気があれば制吐薬を使用します。
軽快期は、ゆっくりであれば頭を動かしても大丈夫な程度まで、めまいが治まった状態です。急な頭位変化を避けつつも必要以上に安静にしないリハビリをしっかり行うのがポイントです。適度な頭部の運動は回復を早めてくれるとされています。寝る前の寝返り練習、枕で頭位をやや高めに保つ、長時間同じ姿勢を避ける、十分な睡眠・水分などを心がけましょう。
左右どちらか一方だけを下にして寝る癖が強い場合、反対側も使う意識をすのも効果的です。

Q&A
Q. めまいは数十秒で止まります。受診は必要ですか?
A. 典型的な頭位誘発・短時間の回転性めまいはBPPVが疑われます。多くは数日〜数週間で軽快しますが、繰り返し生活に支障がある、難聴・耳鳴り・神経症状を伴う場合は受診をおすすめします。
Q. 薬だけで治りますか?
A. 内服療法は吐き気や、回復期の浮動感を抑える補助的な役割しかありません。BPPVの治癒を早めるコツは頭位治療や、軽快期になってからのご自身による積極的なリハビリです。
Q. 再発を減らすコツは?
A. 睡眠・水分・適度な運動が基本となります。同じ側を下にして眠り続けない、長時間同一姿勢を避ける、起床時はゆっくり体位を変えるなどで再発を抑えられるとされています。
Q. 危ない“めまい”との見分け方は?
A. 激しい頭痛・ろれつ困難・手足のしびれ/麻痺・意識障害があれば早急に救急受診をしてください。長引くふらつきや難聴や耳閉感を伴うめまいの場合は、早めに耳鼻科の受診をお勧めします。。

まとめ
BPPVは最も多い末梢性めまいの一つで、特定の頭位で短時間の回転性めまいを繰り返すのが特徴です。
だれにでも、いつでも起こり得る疾患ですが、適切なタイミングで検査を行うことで、診断・早期のリハビリを行うことができます。
記事監修

Itsuki Kitayama
大阪あわじ駅前クリニック 院長・医学博士
北山 一樹
医学博士(大阪大学)
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 認定専門医・指導医
日本アレルギー学会 認定専門医
日本喘息学会 認定専門医
日本音声言語医学会 音声言語認定医
大学病院・基幹病院にて小児から成人、一般的な耳鼻咽喉科疾患から悪性疾患まで幅広い診療を担当。外来・手術・研究の総合的な経験を有する。
音声の研究では、“粗ぞう性嗄声(ガラガラ声)”の音響学的なメカニズムとその発声機構を世界で初めて解明し、学術報告を行う。
また、難しくなりがちな医療情報をわかりやすく伝えることを目指し、医学専門デザイン事業STUDIO BIUMを運営。学会・医療機関のロゴ・配布資料・Webサイトなど、一貫した“わかりやすさ”を設計している。
学術実績など
