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妊娠中・授乳中の治療内容


妊娠中・授乳中の治療内容
妊娠中・授乳中のお薬の使い分け
妊娠中・授乳中の薬は、母体の症状と母児の安全性のバランスで個別に判断します。原則は局所療法(内服にたよらない治療)の優先と、必要時の最小有効量・必要最短期間の内服になります。
本ページでは、国立成育医療研究センター(成育)などの公的データをもとに、当院の治療方針と代表的な治療薬の使い方をご紹介いたします。
参考:https://www.ncchd.go.jp/kusuri/
参考(授乳と薬の考え方):https://www.ncchd.go.jp/kusuri/lactation/

抗ヒスタミン薬(アレルギーの内服薬)
授乳中
授乳への移行は一般に少量で、授乳のために必ずしも薬をやめる必要はない、という考え方が示されています。
参考:https://www.ncchd.go.jp/kusuri/lactation/
成育の「授乳中に安全に使用できると考えられる薬(薬効順)」を参考に、デスロラタジン(デザレックス)/フェキソフェナジン(アレグラ)/ロラタジン(クラリチン)などを中心に検討します。
参考:https://www.ncchd.go.jp/kusuri/lactation/druglist_yakkou.html
すでにレボセチリジン(ザイザル)で良好にコントロールされている方は、無理に変更せず継続することも選択肢です。
一方で、ビラスチン(ビラノア)/ルパタジン(ルパフィン)は授乳中の情報が限られるため、新生児・早産児では代替薬を優先し、継続する場合も赤ちゃんの眠気・哺乳・体重増加に注意しながら個別に判断します。
参考(ビラスチン):https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK618281/
参考(ルパタジン):https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK618292/
妊娠中
妊娠中は最小有効量・必要最短期間が原則です。まずは局所療法を優先し、内服が必要な場合は使用経験の多い薬(例:ロラタジン、セチリジン等)を中心に、症状と生活に合わせて選択します(フェキソフェナジン等も選択肢になります)。

点鼻ステロイド(アレルギーの点鼻薬)
授乳中
フルチカゾンフランカルボン酸(アラミスト)/モメタゾン(ナゾネックス)/シクレソニド(エリザス)は、局所作用が中心で全身への吸収が少なく、授乳への影響は低いと考えられます。
参考(フルチカゾン):https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK500777/
参考(モメタゾン):https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK501039/
参考(シクレソニド):https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK501458/
妊娠中
局所薬は全身曝露が小さく、上記の点鼻薬(フルチカゾンフランカルボン酸(アラミスト)/モメタゾン(ナゾネックス)/シクレソニド(エリザス))は妊娠中も選択肢になり得ます。妊娠週数にかかわらず必要性に応じて検討します(最終判断は主治医と相談して決めます)。
参考(レビュー):https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29164323/

ステロイド内服
授乳中
プレドニゾロン(プレドニン)は母乳移行が少なく、比較的安全とされています。
より安全性を確保する場合、「内服後3〜4時間あけて授乳」とする方法もあります(乳汁中ピークを避ける目的。ただし必須ではありません)。
参考:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK501076/
妊娠中
重症例では妊娠時も使用可能です。妊娠初期の不要な長期投与は回避し、必要性と代わりの治療法の有無を都度評価します。
参考:https://uktis.org/monographs/use-of-systemic-corticosteroids-in-pregnancy/

去痰薬(痰切り)
授乳中
カルボシステイン(ムコダイン)/アンブロキソール(ムコソルバン)は、短期使用が検討されることがあります(薬剤によりデータ量が異なるため個別に判断します)。
参考(カルボシステイン):https://www.nhs.uk/medicines/carbocisteine/pregnancy-breastfeeding-and-fertility-while-taking-carbocisteine/
参考(アンブロキソール):https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK615241/
妊娠中
まずは鼻洗浄など非薬物療法を優先します。必要時はムコダイン/ムコソルバンを最小量・短期間で処方いたします。

鎮咳薬(咳止め)
授乳中
まずデキストロメトルファン(メジコン)を選択します。
参考:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK501456/
ジヒドロコデイン等(フスコデ配合錠)は、赤ちゃんの傾眠・呼吸抑制を起こす可能性があるため、当院では授乳中の処方は行っておりません。
参考:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK500692/
妊娠中
咳の原因治療(副鼻腔炎・鼻炎のコントロール)を優先し、デキストロメトルファン(メジコン)を最小量・短期間で処方いたします。
ジヒドロコデイン等(フスコデ配合錠)は、妊娠後期(特に分娩前)は新生児呼吸抑制の懸念があるため、当院での処方は行っておりません。

喘息吸入薬
授乳中
喘息コントロールの有益性が上回るため、吸入治療は原則継続します(最小有効量・吸入後のうがい)。
参考(成育Q&A):https://www.ncchd.go.jp/kusuri/lactation/qa_junyu.html
妊娠中
喘息コントロールの有益性が上回るため、吸入治療は原則継続します。
参考(UKTIS):https://uktis.org/monographs/use-of-inhaled-corticosteroids-in-pregnancy/

抗菌薬(抗生剤)
授乳中
アモキシシリン(サワシリン)/アモキシシリン+クラブラン酸(オーグメンチン)/クラリスロマイシン(クラリス)/レボフロキサシン(クラビット)は、成育のリスト等を参考に授乳中も使用が検討されます(必要に応じて児の下痢・カンジダ等に注意)。
参考(成育:薬効順):https://www.ncchd.go.jp/kusuri/lactation/druglist_yakkou.html
参考(成育:50音順):https://www.ncchd.go.jp/kusuri/lactation/druglist_aiu.html
参考(アモキシシリン):https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK500887/
参考(クラリスロマイシン):https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK501207/
妊娠中
第一選択として、アモキシシリン(サワシリン)/アモキシシリン+クラブラン酸(オーグメンチン)は妊娠中に使用可能と整理されています。
参考(UKTIS:ペニシリン系):https://uktis.org/monographs/use-of-penicillins-in-pregnancy/
クラリスロマイシン(クラリス)は必要時に使用されることがありますが、妊娠初期は他剤も含めて個別に検討し、必要性が高い場合に限り処方いたします。
参考(UKTIS):https://uktis.org/monographs/use-of-clarithromycin-in-pregnancy/

まとめ
必要最小限の投薬を相談させていただきながら、母児の有益性とリスクを考えたうえでの処方を行います。お気軽にご相談ください。

補足
妊娠中・授乳中の治療では、「薬をできるだけ避けること」だけが正解ではありません。症状が強く、睡眠や食事、育児、仕事に支障が出ている場合や、感染症や喘息などを放置する不利益が大きい場合には、必要な治療を適切に行うことが大切です。
参考:https://www.ncchd.go.jp/kusuri/
また、耳鼻咽喉科クリニックでは、内服薬だけでなく、鼻処置やネブライザー処置など、主として局所に作用し、全身への吸収が少ない治療を行うことができます。こうした局所治療によって、鼻やのどの炎症、鼻づまり、後鼻漏などの症状が軽くなることがあり、妊娠中・授乳中で内服薬をできるだけ減らしたい方にも、有用な選択肢となります。
一方で、市販の総合感冒薬や鼻炎薬には複数の成分が含まれていることが多く、妊娠中・授乳中には注意が必要な場合があります。「市販薬だから軽い薬」とは限らないのです。
高熱が続く、のどの痛みが強くて水分がとれない、膿のような鼻汁や強い顔面痛が続く、耳の強い痛みや耳だれがある、急に聞こえが悪くなった、咳が長引く、息苦しさやゼーゼーがある、といった場合は早めの受診をおすすめします。
記事監修

Itsuki Kitayama
あわじ駅前クリニック 院長・医学博士
北山 一樹
医学博士(大阪大学)
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 認定専門医・指導医
日本アレルギー学会 認定専門医
日本喘息学会 認定専門医
日本音声言語医学会 音声言語認定医
大学病院・基幹病院にて小児から成人、一般的な耳鼻咽喉科疾患から悪性疾患まで幅広い診療を担当。外来・手術・研究の総合的な経験を有する。
音声の研究では、“粗ぞう性嗄声(ガラガラ声)”の音響学的なメカニズムとその発声機構を世界で初めて解明し、学術報告を行う。
また、難しくなりがちな医療情報をわかりやすく伝えることを目指し、医学専門デザイン事業STUDIO BIUMを運営。学会・医療機関のロゴ・配布資料・Webサイトなど、一貫した“わかりやすさ”を設計している。
学術実績など
