あわじ駅前クリニック 耳鼻咽喉科・小児科

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顔が曲がる

顔が曲がる?――その症状、顔面神経麻痺かもしれません

「口元がゆがむ」「目が閉じにくい」「水を飲むとこぼれる」――ある朝ふと鏡の前で気づく、そんな違和感。多くは末梢性の顔面神経麻痺で、適切な早期の治療介入で回復が期待できます。ただし、まれに脳卒中などの中枢性が隠れていることもあり、早めの受診が安心への近道です。

顔面神経麻痺とは

顔の表情筋を動かす顔面神経の働きが弱くなる状態です。涙・唾液・味覚・音の響き方にも関係する神経なので、涙が出にくい/出すぎる、味がわかりにくい、音が響くなどを伴うことがあります。単純ヘルペスウイルスが再活性化とされる「ベル麻痺」と、水痘・帯状疱疹ウイルスの再活性化による「ハント(ラムゼイ・ハント)症候群」が代表です。

末梢性と中枢性のちがい

末梢性(ベル麻痺・ハント症候群など)は、額のシワ寄せ・まばたきも弱くなり、顔半分全体の動きが落ちます。
中枢性(脳卒中など、命に関わる疾患)は、額は比較的動くのに口元だけがゆがむことがあり、手足の麻痺や言葉のもつれを伴うことがあります。こうしたサインがあればまずは救急受診をおこなってください。(hospital.japanpost.jp)

症状の進み方と原因

ベル麻痺

風邪様症状や疲労のあとに突然発症します。耳の痛みは軽く、皮疹はありません。

適切な初期治療で多くが回復に向かいます。

ハント(ラムゼイ・ハント)症候群

耳周りの痛み小さな水疱難聴・めまい・耳鳴りを伴いやすいタイプです。

重く長引きやすいため、早期の治療開始がとても大切です。

当院で行う診察と検査

診察の流れ

まずは発症時期・誘因・随伴症状(耳の痛み、発疹、めまい・難聴、味覚、涙・唾液、音の響き)を丁寧に伺い、顔面の動きを細かく評価します。

この疾患は、顔面神経麻痺以外にも、様々な合併症状を伴うことがあり、特に外耳・鼓膜の観察めまい・聴力のチェックを同時に行う必要があります。

必要に応じた検査

鼻咽腔や耳の診察に加え、聴力検査・ティンパノメトリーで耳の合併を確認。重症例や経過によっては神経電気検査(ENoG など)を専門施設と連携して実施します。

脳卒中が疑わしい場合は、総合病院で頭部画像検査を優先します。

治療のポイント(当院の方針)

治療の開始はできるだけ早く!

ベル麻痺では、発症早期にステロイドを用いると回復の見込みが高まることが示されています。ハント症候群では、ステロイド+抗ウイルス薬併用が推奨されます。いずれも数日以内の開始が重要です。

それぞれを区別するにはいくつかの方法がありますが、発症早期の段階では、それらを明確に区別する手段は有りません。そのため、非常に軽度の顔面神経麻痺の状態を除き、早期の段階から、重症になる可能性の高いハント症候群を念頭に治療を開始することが一般的です。

眼の保護

まぶたが閉じにくい間は、人工涙液眼軟膏で角膜を守り、夜はテーピングで閉瞼を補助します。角膜の乾燥によって視力低下のリスクもあるため、必要時は眼科とも連携します。

痛み・めまい・耳鳴りへの対応

耳の痛みが強いハント症候群では鎮痛薬を適宜併用します。難聴・めまいが強い場合は聴覚平衡機能の評価を加え、治療を調整します。

リハビリテーション

急性期の安静を経てから表情筋リハビリを必要に応じて行います。自己流で表情筋を強く刺激してしまうと病的共同運動(異なる場所の表情筋が、意図せず連動してしまうこと)の原因になるため、医師の指導に沿って適切に行います。

生活の注意とセルフケア

冷え・過労を避け、十分な睡眠をとってください。顔を強くこする・無理なマッサージは避けましょう。

予防について(帯状疱疹ワクチン)

50歳以上では帯状疱疹ワクチンにより発症と重症化の抑制が期待できます。

ハント症候群を完全に防げるわけではありませんが、リスク低減の選択肢としてご相談ください。自治体の助成制度の有無は各市区町村により異なります。(準備中)

Q&A

Q. 何科を受診すればいいですか?

A. まずは耳鼻咽喉科への受診が望ましいです。耳の症状や皮疹の確認、聴力検査を含めて総合的に評価できます。言葉がもつれる/片麻痺/激しい頭痛を伴う場合は、命に関わる脳卒中などの可能性があります。早急に救急要請をお願いします。

Q. 受診のタイミングは?

A. 発症からいかに早く治療開始するかが大切です。とくに、抗ヘルペス薬の作用機序はウイルスの合成阻害であり、既に増殖したウイルスには無効であるため、発症3日以内の早期投与が重要とされています。

Q. どれくらいで良くなりますか?

A. 麻痺の原因や麻痺の程度にもよりますが、数週間~数か月での回復が一般的です。発症から1週間程度までは、一般的に麻痺は増悪する傾向があり、その後徐々に改善に向かいます。「治療を開始したのにどんどん麻痺がひどくなってきている感じがする」、ということは、発症超早期に治療開始した場合に起こり得る経過ですが、その後緩やかに改善していくことが殆どです。

Q. 目が閉じにくいときのコツは?

A. 人工涙液眼軟膏、夜間の閉瞼テープで角膜を保護しましょう。ゴミや乾燥を避ける環境づくりも大切です。必要時は眼科へご紹介します。

Q. 再発を防ぐ方法は?

A. 十分な睡眠・栄養、50歳以上のワクチン世代では帯状疱疹ワクチンをご検討ください。ストレス・過労のコントロールも有効です。

まとめ(院長メッセージ)

顔の動きは、日々の表情やコミュニケーションに直結する大切な機能です。

「朝、顔が動かない?」そんな時は、どうか一人で悩まず早めにご相談ください。早めの一歩が、回復の可能性をグッと上げてくれることにつながります。

記事監修

院長のプロフィール写真

Itsuki Kitayama

あわじ駅前クリニック 院長・医学博士

北山 一樹

医学博士(大阪大学)
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 認定専門医・指導医
日本アレルギー学会 認定専門医
日本喘息学会 認定専門医
日本音声言語医学会 音声言語認定医

大学病院・基幹病院にて小児から成人、一般的な耳鼻咽喉科疾患から悪性疾患まで幅広い診療を担当。外来・手術・研究の総合的な経験を有する。
音声の研究では、“粗ぞう性嗄声(ガラガラ声)”の音響学的なメカニズムとその発声機構を世界で初めて解明し、学術報告を行う。
また、難しくなりがちな医療情報をわかりやすく伝えることを目指し、医学専門デザイン事業STUDIO BIUMを運営。学会・医療機関のロゴ・配布資料・Webサイトなど、一貫した“わかりやすさ”を設計している。

学術実績など