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顔面神経麻痺


顔面神経麻痺|早期診断と適切な治療で、後遺症を最小限に
顔面神経麻痺とは
顔面神経麻痺は、額を寄せる・目を閉じる・頬をふくらませる・口角を上げるといった表情筋の動きが弱くなる/できなくなる状態を指します。
鏡に映る顔の左右差や歪みにまず気づくことが多く、目が閉じにくい・口から飲み物がもれる・味覚の変化・耳が敏感になる(聴覚過敏)など、生活上の細かな不便が重なります。比較的よく見られる病気で、年齢や季節を問わず起こり得ますが、発症直後の対応がその後の経過を左右します。


主な原因
顔面神経麻痺の原因の多くはウイルスの再活性化と考えられています。最も頻度が高いのがベル麻痺で、顔面神経を取り巻く組織がむくみ、神経の伝わりが悪くなることで生じます。もう一つ重要なのがハント症候群(耳性帯状疱疹)で、耳介の痛み・水疱や強い耳鳴り・難聴・めまいを伴うことがあり、ベル麻痺に比べて重症化しやすい傾向があります。外傷や腫瘍など、非ウイルス性の要因でも起こるため、初診時には背景疾患を丁寧に見極めることが欠かせません。

診断(何を確認するか)
診断は発症時期・併存症状(耳痛、発疹、めまい、難聴、味覚低下など)を詳しく伺い、麻痺の程度を40点満点(柳原法)で判定します。
耳鏡・鼓膜所見や神経学的診察を行い、聴力検査や眼振検査・平衡機能検査で耳の合併症を評価します。
経過が重い/遷延する場合や、腫瘍・中枢疾患を否定できない場合には画像検査(MRIなど)を追加し、他疾患の可能性を除外します。(MRI検査は同ビル内の新大阪画像の森診断クリニックに紹介にて行います)
発症早期(とくに1週間以内)に診断を固めることが、その後の回復と後遺症の軽減に直結します。

治療
治療の柱は、発症早期の薬物療法です。原則はステロイドと抗ウイルス薬による治療となります。
ステロイドは神経のむくみを抑える標準治療として広く行われ、ハント症候群や、ベル麻痺でも重症度が高い場合は、抗ウイルス薬をステロイドと併用します。
重症度が高く改善が乏しい場合、まれに顔面神経減荷術などの外科的治療が選択されることもありますが、適応は慎重に検討されます。
いずれも開始時期が早いほど回復が良好で、後遺症のリスクを下げられます。
当院では、初期評価と薬物治療、耳症状の合併が疑われる場合の聴力・平衡機能の確認、必要時の専門施設への連携を迅速にに行います。

リハビリテーションと後遺症のケア
回復過程では、共同運動(口を動かすと目が閉じる等)やこわばりなどの後遺症が問題になることがあります。独学で無理に動かす訓練は悪化を招くことがあり、専門的な評価と指導が大切です。

日常生活で気をつけたいこと
麻痺側の眼の乾燥は角膜障害のリスクとなるため、人工涙液・眼軟膏・就寝時のテープ保護など眼のケアが不可欠です。
十分な睡眠と栄養で体調を整え、過度のストレスや冷えを避けることが重要です。

Q&A
Q. いつまでに受診すれば間に合いますか?
A. 発症から1週間以内が重要な目安です。とくにハント症候群が疑われる(耳の痛み・発疹、難聴・耳鳴り・めまいを伴う)場合はできるだけ早く受診してください。抗ウイルス薬を含めた治療開始が早いほど回復が良好です。
Q. ステロイドは本当に必要ですか?副作用が心配です。
A. 急性期のステロイドは標準治療で、神経のむくみを抑える目的で用います。糖尿病や高度の高血圧など基礎疾患がある場合は入院での治療が望ましく、高次機能病院へ紹介させていただきます。疑問や不安は遠慮なくご相談ください。
Q. 後遺症はどのくらい残りますか?
A. 個人差がありますが、早期治療で改善する例が多数です。重症度や合併症のある方、治療開始時期によって回復の幅が変わるため、発症直後の受診と計画的なフォローが予後を左右します。

まとめ
顔面神経麻痺は、表情の動き・食事などに広く影響する疾患ですが、早期の診断と治療で回復の可能性をあげ、後遺症を抑えることが可能です。
気になる症状に気づいたら、ためらわずご相談ください。
記事監修

Itsuki Kitayama
あわじ駅前クリニック 院長・医学博士
北山 一樹
医学博士(大阪大学)
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 認定専門医・指導医
日本アレルギー学会 認定専門医
日本喘息学会 認定専門医
日本音声言語医学会 音声言語認定医
大学病院・基幹病院にて小児から成人、一般的な耳鼻咽喉科疾患から悪性疾患まで幅広い診療を担当。外来・手術・研究の総合的な経験を有する。
音声の研究では、“粗ぞう性嗄声(ガラガラ声)”の音響学的なメカニズムとその発声機構を世界で初めて解明し、学術報告を行う。
また、難しくなりがちな医療情報をわかりやすく伝えることを目指し、医学専門デザイン事業STUDIO BIUMを運営。学会・医療機関のロゴ・配布資料・Webサイトなど、一貫した“わかりやすさ”を設計している。
学術実績など
