あわじ駅前クリニック 耳鼻咽喉科・小児科

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嗅覚障害

嗅覚障害|においがわからない・変に感じるときに知ってほしいこと

嗅覚障害とは

朝いれたコーヒーの香りがしない。好きだった花の香りが妙に違って感じる(異嗅)。何もないのに焦げ臭い(幻嗅)。——こうした「においの低下・消失・ゆがみ」を嗅覚障害と呼びます。

食事のおいしさ、危険(ガス・焦げ)の察知、気分や記憶にもつながる大切な感覚のため、生活の質に直結します。

においを感じるしくみ

空気中のにおい分子が鼻の最奥部にある嗅粘膜へ届き、嗅細胞の先端の嗅毛でとらえられます。刺激は嗅神経→嗅球→大脳へ電気信号として伝わり、においの識別・快不快の判断が行われます。
鼻づまりの時ににおいが弱くなるのは、嗅粘膜までにおい分子が届きにくいからです。つまり「鼻の通り」と「嗅覚」は密接に関係するのです。

どこで障害?—3つのタイプ

気導性嗅覚障害(鼻の通り道の問題)

副鼻腔炎(蓄膿)や鼻茸(ポリープ)、強いアレルギー性鼻炎、鼻中隔弯曲などで、におい分子が嗅粘膜に届かないことで起こります。原因を治療すれば回復が期待しやすいタイプです。

嗅神経性(末梢神経)嗅覚障害(嗅細胞・嗅神経のダメージ)

かぜやウイルス(感冒後・COVID-19 など)、一部の薬剤、有害ガスなどで嗅細胞が傷むタイプです。異嗅・幻嗅が出やすく、回復には時間と訓練が必要です。

中枢性嗅覚障害(脳側の経路の問題)

頭部外傷、脳腫瘍、神経変性疾患(アルツハイマー・パーキンソン病)などが原因です。難治のことが多く、MRI などの画像検査での評価が必要です。

よくある原因と特徴

副鼻腔炎・鼻茸・アレルギー性鼻炎

鼻づまり+色のついた鼻水+におい低下をきたします。口臭や咳、顔の重だるさを伴うこともあります。適切な内服・点鼻・ネブライザー、必要に応じ手術で改善が見込めます。

感冒後・COVID-19 後

多くは数週間〜数か月で自然回復しますが、においの“ゆがみ(異嗅)”が長引く例もあります。嗅覚リハビリテーションが有効です。

頭部外傷・加齢・薬剤性

転倒・交通外傷の後、においが消えることがあります。また加齢でも嗅覚は低下し、60代で約4人に1人、80代で約2人に1人で低下が見られるとされます。一部の薬(抗がん薬・一部抗菌薬など)も嗅覚障害に関与します。

受診時の検査

問診・内視鏡

発症時期、誘因(かぜ・外傷・薬)、異嗅/幻嗅・味覚の変化の有無を伺い、細径内視鏡で鼻腔〜嗅裂・上咽頭を丁寧に観察します。

機能検査・画像

嗅覚の強さを評価する静脈性嗅覚検査(アリナミンテスト)を行います。副鼻腔評価にはCT、中枢性が疑わしい場合にはMRIを検討します。
(MRIは同ビル内の連携する画像検診センターにて紹介いたします。)

アリナミン製剤の供給状況について
現在、アリナミン注射液は全国的に供給が不安定な時期であり、静脈性嗅覚検査(アリナミンテスト)の実施枠が一時的に制限される場合があります。
その際は、内視鏡所見・副鼻腔CTなどの情報を総合して評価し、必要に応じて連携医療機関での代替嗅覚検査(例:T&T嗅覚検査)をご案内します。

治療の考え方(当院の方針)

「原因に応じた対処」+「嗅覚リハビリ」の二本立てです。

原因治療

  • 副鼻腔炎・鼻茸・アレルギー:抗菌薬・去痰薬・ステロイド点鼻抗アレルギー薬ネブライザー。必要に応じて内視鏡下副鼻腔手術、鼻中隔矯正、下鼻甲介手術を検討します。

  • 感冒後・COVID-19 後嗅覚リハビリを中心に行います。症例により短期の経口/点鼻ステロイドビタミンB12・亜鉛・漢方(例:当帰芍薬散)を組み合わせます(万能薬はありません)。

嗅覚リハビリテーション(嗅覚刺激療法)

Hummel 法として知られる方法で、特徴の異なる香り(例:レモン・バラ・ユーカリ・クローブ など)を、朝夕15秒ずつ、3か月以上意識して嗅ぎます。においの入力を継続することで嗅覚神経の可塑性を引き出し、回復を後押しします。

ご自宅で香水や身近な香り(コーヒー・柑橘・和風だし・季節の花など)から始められます。
※不快な腐敗臭などは避け、「心地よい」と感じる香り
を選ぶのがコツです。

こんなときは早めに受診を

  • 突然の嗅覚消失、頭部外傷後の嗅覚低下

  • においのゆがみ(異嗅)や幻嗅が強く、日常生活に支障がでている

  • 鼻づまり・色のついた鼻水・発熱を伴い長引く

Q&A

Q. コロナ後のにおい、どのくらいで戻りますか?

A. 多くは数週間〜数か月で改善していきます。ただし異嗅・幻嗅が残る例もあり、その場合は嗅覚リハビリを早めに始めるのがおすすめです。

Q. 味もわからない気がします。嗅覚と関係ありますか?

A. はい。食べ物の「おいしさ」の大部分は香り(後鼻腔からのにおい)が担っています。嗅覚が落ちると味がわからない感覚になります。嗅覚が戻れば改善することが多いです。

Q. ステロイド点鼻薬は怖くないですか?

A. 鼻だけに作用する局所薬で、適切な用量・期間なら全身的な副作用は少ない安全な薬です

Q. 家でできることは?

A. 嗅覚リハビリが最重要です。あわせて鼻洗浄(0.9%生理食塩水・人肌)加湿と睡眠アレルギーのコントロール禁煙なども有効です。ご自身でニオイの入力を毎日続けることが回復への近道です。

Q. いつ受診すべき?

A. 48時間以内に突然の嗅覚消失が起きた、副鼻腔炎症状が長引く異嗅・幻嗅でつらい——いずれも早めの受診をおすすめします。

まとめ(院長からのメッセージ)

嗅覚は食べる喜び・危険の回避・心の健康と深く結びついた感覚です。

においの不調は原因も回復速度も人それぞれです。内視鏡画像評価などを組み合わせ、因を見極め、最適な薬物療法嗅覚リハビリテーションを設計します。
「いつか戻るかな」とご自身で判断せず、今日からできる一歩を一緒に始めていきましょう。気になるサインがあれば、どうぞ遠慮なくご相談ください。

記事監修

院長のプロフィール写真

Itsuki Kitayama

あわじ駅前クリニック 院長・医学博士

北山 一樹

医学博士(大阪大学)
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 認定専門医・指導医
日本アレルギー学会 認定専門医
日本喘息学会 認定専門医
日本音声言語医学会 音声言語認定医

大学病院・基幹病院にて小児から成人、一般的な耳鼻咽喉科疾患から悪性疾患まで幅広い診療を担当。外来・手術・研究の総合的な経験を有する。
音声の研究では、“粗ぞう性嗄声(ガラガラ声)”の音響学的なメカニズムとその発声機構を世界で初めて解明し、学術報告を行う。
また、難しくなりがちな医療情報をわかりやすく伝えることを目指し、医学専門デザイン事業STUDIO BIUMを運営。学会・医療機関のロゴ・配布資料・Webサイトなど、一貫した“わかりやすさ”を設計している。

学術実績など