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長引く発熱


長引く発熱(子ども)——「続く熱」の裏側を丁寧にたどる診療
はじめての高熱は不安ですが、数日たっても熱が下がらないと、心配はぐっと大きくなりますよね。
小児科では、ただ熱を下げるだけではなく、なぜ長引いているのかを一つずつ確かめます。背景に細菌感染症や特殊なウイルス感染、川崎病などの免疫の病気、まれに血液の病気が隠れていないか——原因を見つけて、それに合った治療につなげるのが目的です。

長引く発熱とは
多くのかぜは3〜4日で解熱しますが、1週間前後つづく場合は原因を広く考える必要があります。医学的には、診断の難しい不明熱(FUO)という概念があり、小児では8日以上の発熱が続き、初期検査で原因がはっきりしないときに検討します。
成人の古典的定義(38.3℃以上が3週間)とは扱いが少し異なるため、子どもは早めの評価が大切です。

診断の進め方(当院の流れ)
まずはいつから・どんな上がり下がりで・どの症状が一緒に出るかを細かくうかがいます。診察ではのど・耳・鼻・リンパ節・胸腹部・皮膚をくまなくチェック。必要に応じて血液検査(炎症反応・血球)や尿検査、流行状況に合わせた迅速検査(インフルエンザ、溶連菌、RS、アデノ、COVID-19など)を組み合わせます。
肺炎や尿路感染、深部の感染が疑わしい時は、胸部レントゲンや腹部エコーなど画像検査を連携する医療機関にて実施します。

鑑別疾患(考えられる疾患)
感染症(ウイルス性)
発熱が長引くとき、まず考えるのはウイルス感染の遷延です。とくに伝染性単核球症(EBウイルス・サイトメガロウイルス)では、高熱が数日〜1週間以上続き、のどの強い痛みや扁桃の腫れ、首のリンパ節の腫れ、肝機能の変化が同時にみられることがあります。乳幼児では症状が軽く見過ごされることもあり、思春期以降では全身倦怠感が目立つことがあります。必要に応じて血液検査でウイルス関連の抗体や肝胆道系の数値を確認します。
感染症(細菌性)
肺炎・尿路感染症・骨関節の深部感染など、体の奥に病巣があると熱が長く続くことがあります。尿路感染症では背部痛や尿検査の異常が手がかりになり、肺炎ではレントゲンを追加して評価します。培養検査で原因菌を特定し、抗菌薬を選択します。
結核など慢性の感染症
頻度は高くありませんが、結核などの慢性感染症が背景にあることもあります。長く微熱と咳が続く、体重が減る、夜間の寝汗などがあれば、胸部画像や結核関連検査を組み合わせて評価します。
耳鼻咽喉科領域の病巣感染
副鼻腔炎・反復性扁桃炎・中耳炎など耳鼻科疾患が長引く発熱の原因になることがあります。鼻づまりやどろっとした鼻汁、咽頭の強い痛みや扁桃の白苔、耳の痛みや耳だれを伴うときは疑います。必要時は当院耳鼻科と連携し、鼻咽腔内視鏡、鼓膜所見の確認、必要な培養や画像検査までワンストップで進めます。
免疫・炎症性疾患(膠原病・自己炎症性)
川崎病、若年性特発性関節炎(全身型)、PFAPAなどの自己炎症性疾患は、感染がなくても炎症により発熱が続きます。
川崎病では5日以上の高熱に加え、眼の充血、いちご舌、発疹、手足の腫れ、頸部リンパ節腫脹などが手掛かりで、心臓の合併症を避けるため早期診断が重要です。
PFAPAは幼児期に多く、周期的な高熱と口内炎・咽頭炎・頸部リンパ節腫脹を繰り返し、発作間欠期は元気に過ごせるのが特徴です。(jskd.jp)
小児COVID-19関連の多系統炎症性症候群(MIS-C)
まれですが、新型コロナ感染後数週間してから高熱・腹痛・発疹・結膜充血などが出現し、複数臓器に炎症が及ぶ病態です。川崎病と似た所見を呈することがあります。
悪性疾患(血液腫瘍など)
頻度は低いものの、白血病・リンパ腫などの血液腫瘍が発熱の原因となる場合があります。皮下出血や鼻血、貧血、持続するリンパ節の腫れ、体重減少や夜間の寝汗などが同時にみられるときは注意が必要です。血液検査や画像検査を組み合わせ、必要に応じて専門施設と連携して精査します。
そのほかに考える病態
薬剤熱(内服薬が原因の発熱)や、炎症性腸疾患(IBD)など感染以外の慢性炎症でも発熱が続くことがあります。薬剤熱は原因薬の中止で解熱するのが特徴で、詳細な服薬歴の確認が診断の近道です。IBDでは腹痛・下痢・血便に加え、関節痛や成長障害、貧血とともに発熱が続くことがあります。

耳鼻科と連携するケース
扁桃炎や副鼻腔炎、中耳炎が発熱を長引かせていることもあります。のどの強い痛みや膿栓、鼻づまりと色のついた鼻汁、耳の痛みや難聴感が続く時は、耳鼻咽喉科での診察・検査が診断を後押しします。
当院では必要時に耳鼻科と連携し、内視鏡を含む評価から処置・手術相談までをワンストップで行える体制を整えています。

Q&A
Q. 何日続いたら「長引く」と考えますか?
A. 目安として4日以上は一度受診をおすすめします。1週間前後続くなら原因を広く検討します。8日以上で初期検査でもはっきりしない場合は不明熱(FUO)の考え方で、追加検査や専門科連携を検討します。
Q. 薬で熱がいったん下がっても、また上がるのはなぜ?
A. 解熱薬は痛みやだるさを和らげる薬で、原因そのものを治す薬ではありません。原因(細菌・ウイルス・炎症)が残っていれば再び発熱します。つらい時は我慢せず解熱鎮痛薬で楽にしつつ、原因を見極めることが大切です。
Q. 熱は上下するのに、他の症状が乏しいときは?
A. 尿路感染症など体の奥の感染は、咳や鼻水などの目立った症状がないことがあります。抗菌薬の前に尿検査・培養を行うと診断の精度が上がります。必要に応じて腎尿路エコーで形の異常も確認します。
Q. 耳鼻科の病気で熱が長引くことはありますか?
A. はい。扁桃炎、副鼻腔炎、中耳炎がくり返すと熱が長びくことがあります。当院は耳鼻科と小児科のワンストップ連携で、内視鏡評価や必要な処置、手術の相談まで途切れなく対応可能です。

まとめ(院長より)
「ただの風邪」では説明しきれない熱が続くとき、見落としをしないことと同時に、過剰な検査や治療を避けることも同じくらい大切です。
耳鼻科との院内連携で、扁桃・副鼻腔・中耳の評価から処置・手術相談までをワンストップで進められるのも当院の強みです。
「長引く熱で毎日が心配」——そんな時こそ、私たちにご相談ください。
記事監修

Itsuki Kitayama
あわじ駅前クリニック 院長・医学博士
北山 一樹
医学博士(大阪大学)
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 認定専門医・指導医
日本アレルギー学会 認定専門医
日本喘息学会 認定専門医
日本音声言語医学会 音声言語認定医
大学病院・基幹病院にて小児から成人、一般的な耳鼻咽喉科疾患から悪性疾患まで幅広い診療を担当。外来・手術・研究の総合的な経験を有する。
音声の研究では、“粗ぞう性嗄声(ガラガラ声)”の音響学的なメカニズムとその発声機構を世界で初めて解明し、学術報告を行う。
また、難しくなりがちな医療情報をわかりやすく伝えることを目指し、医学専門デザイン事業STUDIO BIUMを運営。学会・医療機関のロゴ・配布資料・Webサイトなど、一貫した“わかりやすさ”を設計している。
学術実績など
