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背が低い


低身長(子ども)——背の伸びの“物語”を一緒にたどる診療
ある日、健診のあとにお母さまが心配そうに言いました。「うちの子、背の順でいつも一番前で……。この先、大丈夫でしょうか?」。———
低身長は、同じ年齢の子どもたちの中で身長が基準より低い状態を指します。医学的には−2SD未満(だいたい100人に2〜3人の低さ)を目安にしますが、まず大切なのは“その子なりのカーブ”が保たれているかです。成長曲線を記録して、まずは伸び方のリズムを一緒に見ていきます。

低身長とは
低身長は“背が低い”という見た目の問題だけではありません。平均から外れた伸び方や急に成長のカーブが下がっていくという成長の変化には、体質以外の要因が隠れていることがあります。
−2SD未満、もしくは曲線をまたいで低下する場合は、一度ご相談ください。まずは成長曲線の確認から始めます。

診療の流れ(当院の進め方)
成長曲線をいっしょに描く
母子手帳や園・学校の記録を集め、成長曲線に現在までの身長を点で結びます。“今どの位置か”より“どう伸びてきたか”が診断の手がかりです。
問診・診察と初期検査
食事・睡眠・運動、既往歴や内服を丁寧にうかがい、全身を診察します。必要に応じて血液検査(甲状腺・肝腎機能・栄養指標など)、尿検査、骨年齢(左手のレントゲン)を行います。骨年齢は骨の成熟度を表し、思春期の進み具合や成長の余力を読み解く助けになります。
精密検査が必要なとき
成長ホルモン分泌刺激試験は、点滴を入れてお薬で下垂体を刺激し、2時間ほどかけて採血して反応を確かめます。2種類以上の負荷試験で判定するのが原則です。
検査時には低血糖などのリスクを伴うため、検査が必要な場合は、基幹病院・大学病院と連携して安全に実施します。

低身長の主な原因
体質による小柄(家族性・体格の個性)
ご家族が小柄で、成長曲線に沿って穏やかに伸びているタイプです。健康上の問題はなく、見守りが基本となります。
栄養・生活リズムの影響
エネルギー不足や極端な偏り、睡眠不足は身長の伸びのブレーキになります。食事・睡眠・運動の生活調整で“伸びしろ”が戻ることがあります。
成長ホルモン分泌不全性低身長症
下垂体からの成長ホルモン(GH)の出が弱い状態です。刺激試験で診断し、適応があればGH補充療法を検討します。
SGA性低身長
在胎週数のわりに小さく生まれた(SGA)お子さんの一部では、3歳を過ぎても背が追いつかないことがあります。GH治療の適応があります。また、遺伝要因の精査が役立つケースもあります。
ターナー症候群(女児)
女児にみられる染色体由来の疾患で、低身長や思春期の進みにくさが特徴です。GH治療や女性ホルモン補充などを検討します。長期の見通しを立てたケアが重要です。

治療の考え方
低身長の原因を見極め、それぞれに合わせたオーダーメイドの治療を行います。
体質による小柄なら安心のための定期フォロー、生活要因が関係するなら食事・睡眠・運動の立て直しが中心となります。
GH分泌不全やSGA、ターナー症候群では、条件を満たせば成長ホルモン補充療法を行います。最新の適応判定基準(2024年改訂)を踏まえ、当院で初期評価を整えたうえで、必要時は専門施設と連携し、安全に導入します。
自己注射は最初こそ不安でも、多くのご家庭で1〜2週間ほどで慣れていかれます。

当院でできること
当院では、成長曲線の作成から生活アセスメント、血液・尿検査、必要に応じた骨年齢撮影までワンストップで行います。GH刺激試験や入院が必要な検査・治療は、これまでのネットワークを活かし、基幹病院・大学病院の小児内分泌と密に連携します。

Q&A
Q. 相談の目安はありますか?
A. −2SD未満、あるいは成長曲線のカーブが下向きに変わってきたときは一度ご相談ください。成長曲線についてよくわからない、相談だけしてみたい、などでももちろん大丈夫です。
Q. 骨年齢のレントゲンは安全ですか?
A. 左手の撮影で被ばくはごく少量です。骨の成熟度や思春期の進み具合がわかり、今後の伸びしろの見通しに役立ちます。
Q. GH治療は誰でも受けられますか?
A. 原因・年齢・身長SD・成長速度など厳密な基準があります。SGA性低身長やターナー症候群、GH分泌不全などが対象で、最新の適応判定に基づき判断します。
Q. 家でできることは?
A. 十分な睡眠、エネルギーとたんぱく質をしっかりとる食事、適度な運動が基本です。生活を整えても伸びが心配なら、成長曲線を持ってご相談ください。

まとめ(院長より)
背の伸び方には個人差があり、同時に見逃したくないサインもあります。
副院長は小児科専門医と内分泌代謝専門医のダブルライセンスです。大阪市立総合医療センターや大阪公立大学病院、地域のクリニックで、低身長をはじめ甲状腺の病気、思春期の早発・遅発、下垂体・副腎の異常など、幅広い小児内分泌疾患の診療に携わってきました。
それらの経験を活かし、当院では成長曲線の丁寧な読み解きから骨年齢、必要に応じたGH刺激試験の適応判断まで一貫して行い、成長ホルモン治療やSGA、ターナー症候群に対するケアも、基幹病院・大学病院との連携でスムーズに進めます。
わかりやすい説明と必要十分な検査、そして最適なタイミングを逃さない治療提案を大切にしています。安心してご相談ください。
記事監修

Itsuki Kitayama
あわじ駅前クリニック 院長・医学博士
北山 一樹
医学博士(大阪大学)
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 認定専門医・指導医
日本アレルギー学会 認定専門医
日本喘息学会 認定専門医
日本音声言語医学会 音声言語認定医
大学病院・基幹病院にて小児から成人、一般的な耳鼻咽喉科疾患から悪性疾患まで幅広い診療を担当。外来・手術・研究の総合的な経験を有する。
音声の研究では、“粗ぞう性嗄声(ガラガラ声)”の音響学的なメカニズムとその発声機構を世界で初めて解明し、学術報告を行う。
また、難しくなりがちな医療情報をわかりやすく伝えることを目指し、医学専門デザイン事業STUDIO BIUMを運営。学会・医療機関のロゴ・配布資料・Webサイトなど、一貫した“わかりやすさ”を設計している。
学術実績など
