あわじ駅前クリニック 耳鼻咽喉科・小児科

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味がしない

味覚異常|「あじがしない」「いつもと違う」をそのままにしないために

夕食の味つけが急に薄く感じたり、コーヒーが苦くないと感じたり——味覚は毎日の楽しみと安全を守る大切な感覚です。

味が弱い・違う・何もしなくても苦い/金属っぽい、といった変化は亜鉛不足薬の影響感染症後口腔の炎症、そして嗅覚の低下など、さまざまな要因で起こります。ここでは、原因・検査・治療のながれを、患者さんの目線でわかりやすくご紹介します。

味覚ってどうやって感じているの?

舌や口の中にある味蕾(みらい)が、甘味・塩味・酸味・苦味・うま味を拾い上げ、神経を通って脳に伝えます。

さらに、鼻の奥の嗅覚が加わることで、私たちは「カレー」「コーヒー」といった風味として味を識別しています。つまり、味覚と嗅覚はいわば“チーム”なのです。味覚は正常であっても、においの経路が詰まったり嗅覚が落ちると、「味がしない」と感じることが少なくありません。

よくある原因

亜鉛不足

亜鉛は、舌にある味蕾(みらい)の“かけ替え工事”に必須の栄養です。味蕾の中には味を感じる細胞がたくさん並んでいて、これらは約10〜14日ごとに古い細胞が抜け、新しい細胞に入れ替わる(=ターンオーバー)仕組みになっています。芝生を常に張り替えて青さを保つイメージです。亜鉛が不足するとこの入れ替えが滞り、味が薄い/違う/金属っぽいと感じやすくなります。

不足の背景には、食事の偏りや過度のアルコール、胃腸の不調による吸収低下のほか、一部の薬(降圧薬・利尿薬・制酸薬〔PPI/H2ブロッカー〕など)の長期内服が関わることがあります。思い当たる薬があっても、まずは自己判断で止めずにご相談ください。

薬剤性

長期の降圧薬・抗うつ薬・抗菌薬などで一時的に味が変わることがあります。自己判断で中止せず、まずは相談を。

感染症後・嗅覚の低下

風邪や新型コロナのあとに、嗅覚低下が残り「味が変」に感じるケースが典型的です。鼻炎・副鼻腔炎の悪化やポリープでも同様の不調が出ます。

口腔・舌のトラブル

舌炎・口内炎、虫歯、義歯の不具合、ドライマウス(唾液量の低下)などは味の伝わりを邪魔します。強い舌苔も味をにぶくさせますが、ゴシゴシこすり落とすのは逆効果です。

全身疾患・神経疾患・加齢

鉄欠乏性貧血、糖尿病、甲状腺疾患、神経疾患、そして加齢でも味覚は変化します。心理的ストレスが関わることもあります。

「味の異常」にはタイプがあります

  • 味覚減退:全体的に味が弱い

  • 味覚消失:ほとんど味を感じない

  • 解離性味覚障害:甘味だけ弱い、苦味だけ分からない など

  • 自発性異味症:何も口にしていないのに苦い・金属味がする

  • 嗅覚低下による風味低下:塩味は分かるが、料理の風味が分かりにくい

当院で行う検査

問診・診察

発症時期、内服歴、食生活、口腔状態、鼻の症状(におい)を丁寧にうかがいます。口腔・舌の視診と、鼻・咽頭の内視鏡で炎症やポリープの有無を確認します。

血液検査

血清亜鉛、鉄(フェリチン)、炎症所見、甲状腺機能などを必要に応じて確認します。

治療の考え方

原因に合わせた治療

  • 亜鉛補充:食事指導+亜鉛製剤(保険適用の内服)を一定期間。

    血液検査で亜鉛値を確認したうえで、食事の見直しと医療用の亜鉛製剤を一定期間用います。効果の出方には個人差がありますが、早い方で2〜4週間ほどで「味が戻りはじめた」と実感し、一般には1〜3か月で改善を体感できることが多いです。長く続いた症状や基礎疾患を伴う場合は、3〜6か月と時間がかかることもあります。当院では8〜12週を目安に再検査を行い、用量や期間を調整します。

    食事面では、牡蠣・牛赤身・豚レバー・大豆製品・チーズ・卵・ナッツなどを上手に取り入れましょう。サプリの自己増量は銅欠乏などの副作用につながるため注意が必要です。また、強く舌苔をこすると味蕾を傷つけて逆効果。やさしい清掃と口腔の保湿、そして鼻炎や副鼻腔炎があれば嗅覚のケアも並行すると、風味の回復がスムーズになります。

  • 薬剤性:主治医と相談のうえ減量・切替を検討します。

  • 鼻・副鼻腔の炎症ステロイド点鼻・抗アレルギー薬・副鼻腔炎治療で嗅覚の改善を図り、風味の回復を目指します。

  • 口腔のケア:うがい・保湿、合わない義歯の調整、やさしい舌の清掃(過度にこすらない)。

リハビリテーション(嗅覚トレーニング)

嗅覚低下が関わる場合は、しっかりとした香りを朝晩短時間嗅ぐ方法を併用します。風味の再学習を助け、味の満足度向上にもつながります。

Q&A

Q. どのくらい続いたら受診すべき?

2週間以上改善しない、急に強く低下した、においも分かりにくい体重減少や口腔の痛みを伴う——いずれかがあれば受診をおすすめします。早いほど回復の可能性が高まります。

Q. サプリの亜鉛だけで治りますか?

独断でのサプリは過剰摂取(銅欠乏など)のリスクがあります。血液検査で不足を確認し、医療用亜鉛製剤を適切な量・期間で用いるのが安全です。

Q. コロナ後に味とにおいが戻りません。

多くは数週間〜数か月で改善しますが、遷延例もあります。鼻・副鼻腔の炎症コントロールと嗅覚トレーニングの併用が有効です。自己流で香りを強めるだけでなく、特徴の異なる香りで“練習”するのがコツです。

Q. 舌苔をしっかり取れば味は戻りますか?

取りすぎは逆効果です。味蕾を傷つけると一段と味が鈍ることもあります。

まとめ(院長からのメッセージ)

「味がしない」は、食の楽しみを奪うだけでなく、栄養や体調にも響きます。

味覚・嗅覚・口腔・全身を総合的に評価し、検査に基づく治療をご提案します。

小さな違和感でも遠慮なくご相談ください。一緒に“おいしさ”を取り戻しましょう。

記事監修

院長のプロフィール写真

Itsuki Kitayama

あわじ駅前クリニック 院長・医学博士

北山 一樹

医学博士(大阪大学)
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 認定専門医・指導医
日本アレルギー学会 認定専門医
日本喘息学会 認定専門医
日本音声言語医学会 音声言語認定医

大学病院・基幹病院にて小児から成人、一般的な耳鼻咽喉科疾患から悪性疾患まで幅広い診療を担当。外来・手術・研究の総合的な経験を有する。
音声の研究では、“粗ぞう性嗄声(ガラガラ声)”の音響学的なメカニズムとその発声機構を世界で初めて解明し、学術報告を行う。
また、難しくなりがちな医療情報をわかりやすく伝えることを目指し、医学専門デザイン事業STUDIO BIUMを運営。学会・医療機関のロゴ・配布資料・Webサイトなど、一貫した“わかりやすさ”を設計している。

学術実績など