about
耳鳴り


耳鳴り(じめい)|「音がないのに聞こえる」を正しく理解する

耳鳴りとは?
夜、部屋の明かりを落とすと静けさの中で「キーン」「ジー」「ブーン」という音だけが浮かび上がる——それが耳鳴りです。
周囲に実際の音源はなく、本人だけが感じる音として聞こえます。小さく気にならない日もあれば、睡眠や仕事の集中を妨げるほど強い日もあります。
耳鳴りは、本人にしか聞こえない自覚的耳鳴りが大半で、まれに血流音や筋活動など実際の音が原因となる他覚的耳鳴りもあります。
症状が3か月以上続くと慢性耳鳴りと呼びます。

なぜ起こる?
耳鳴りの背景には聴力の変化が関わることが多く、報告では8〜9割が難聴を伴うとされます。
内耳(蝸牛)の有毛細胞が加齢や騒音でダメージを受けると、脳に届く音の信号が不足します。すると脳は不足分を埋め合わせようと過活動になり、実際には無い音を“ある”と感じる——これが自覚的耳鳴りの主要な仕組みと考えられています。
一方、脈と同期する拍動性や筋けいれんによる耳鳴りは、原因を特定して治療することで改善が期待できる場合があります。


よくある背景(原因)
加齢性難聴では高い音域の低下に伴い高音の耳鳴りが出ることが典型例です。
他にも、騒音曝露(ライブ・工事・長時間の大音量イヤホン)や音響外傷は発症のきっかけになります。
突発性難聴・メニエール病などの内耳疾患、耳垢栓塞・耳管機能異常で一時的に耳がこもって耳鳴りが強まることもあります。
薬剤(高用量の鎮痛薬・一部の抗菌薬・抗がん薬など)が関与することがあり、ストレス・不眠・頸肩こり・顎関節症で感じ方が増幅するのも典型です。


診断と検査
まず問診で発症時期、音の高さ・大きさ、左右差、誘因(騒音・感染・薬・ストレス)を丁寧にお聞きし、耳鏡・細径内視鏡で外耳道・鼓膜を確認します。
純音・語音聴力検査で難聴の有無とタイプを評価し、必要に応じて中耳機能検査(ティンパノメトリー)や内耳機能検査(OAE)を追加します。
片側のみで増悪、拍動性、神経症状の併発などの所見があればCT/MRIなどの画像検査で精査します。

治療の考え方(当院の対応)
耳鳴りは「完全に消す」よりも「楽にする」ことが現実的な目標です。
原因対応と脳の慣れ(順応)を促すケアを組み合わせ、生活機能の回復をめざします。とくに難聴を伴う耳鳴りでは、補聴器の活用が有効な例が多いのが特徴です。
教育的カウンセリング
耳鳴りの仕組みや予後を理解することで、不安→注意の過集中→つらさ増幅の悪循環を断ち、“あるけれど困らない”状態へ導きます。
補聴器・サウンドジェネレーター
不足している音入力を補い、脳の過活動を抑えるねらいです。サウンドジェネレーター機能付き補聴器では、やさしい環境音を併用してTRT(耳鳴り再訓練療法)に近い効果を日常装用で得られます。段階的なフィッティングと定期フォローがポイントです。
音響療法(TRT/部分マスキング)
静寂を避け、小さな環境音(波音・ホワイトノイズ等)で耳鳴りへの注意を分散します。就寝時は小音量の環境音を背景に流すと入眠が楽になります。

薬物療法
不眠・不安・抑うつなど随伴症状の緩和を目的に必要最小限で併用します。原因疾患(中耳炎・メニエール病 等)があればその治療を優先します。
生活指導
睡眠の質を上げ、カフェイン・アルコール・ニコチンの過量を避け、頸肩・顎の筋緊張を和らげます。長時間の大音量は控え、必要に応じて耳栓・イヤーマフで耳を守ります。

セルフケアのコツ
静かすぎる環境を作らない、就寝前に小さな環境音を足す、規則正しい睡眠と軽い運動・入浴で自律神経を整えることが、日内変動を穏やかにします。「命に関わる症状ではない」と理解するだけでも、感じ方が和らぐことがあります。

Q&A
Q. 片耳だけの強い耳鳴りが増えてきました。危険ですか?
A. 多くは心配ありませんが、片側で増悪、拍動性、難聴やめまいを伴う場合は、聴力検査や画像検査で原因を確認します。早期評価が安心につながります。
Q. 薬で治せますか?
A. 耳鳴りそのものを消す特効薬はありません。ただし睡眠障害や不安の緩和、治療可能な内耳疾患の治療でつらさは軽くなります。補聴・音響療法・行動療法を組み合わせるのが基本です。
Q. 静かな場所で余計に気になります。どうしたら?
A. 静寂を避ける音環境作りが有効です。波音や雨音、ホワイトノイズなど小音量で流し、耳鳴りを覆い隠すほどの大音量は避けるのがコツです。
Q. 補聴器は耳鳴りにも効きますか?
A. 難聴を伴う耳鳴りでは有効例が多いです。周波数ごとの調整と継続装用が重要で、必要に応じてサウンドジェネレーター機能の併用を検討します。

まとめ(院長メッセージ)
耳鳴りは音の問題であると同時に、脳の“音の捉え方”の問題でもあります。
当院では細径内視鏡と聴力検査などで耳鳴りの原因を見極め、補聴器・サウンドセラピー・カウンセリングを生活に合わせて設計します。
基幹病院で、難聴やめまいを伴う耳鳴りの診療に数多く携わってきた経験をもとに、無理のないステップで伴走します。
ひとりで抱え込まず、まずはご相談ください。
記事監修

Itsuki Kitayama
あわじ駅前クリニック 院長・医学博士
北山 一樹
医学博士(大阪大学)
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 認定専門医・指導医
日本アレルギー学会 認定専門医
日本喘息学会 認定専門医
日本音声言語医学会 音声言語認定医
大学病院・基幹病院にて小児から成人、一般的な耳鼻咽喉科疾患から悪性疾患まで幅広い診療を担当。外来・手術・研究の総合的な経験を有する。
音声の研究では、“粗ぞう性嗄声(ガラガラ声)”の音響学的なメカニズムとその発声機構を世界で初めて解明し、学術報告を行う。
また、難しくなりがちな医療情報をわかりやすく伝えることを目指し、医学専門デザイン事業STUDIO BIUMを運営。学会・医療機関のロゴ・配布資料・Webサイトなど、一貫した“わかりやすさ”を設計している。
学術実績など
