コラム
COLUMN

こんにちは。院長の北山です。
先日、堺市で開催された市民の皆様に向けた「きこえのセミナー」にて、講師として登壇いたしました。
実は今回の会場は、私の母校である三国丘高校のすぐ近くでした。高校時代は軟式テニス部に所属しており、部活のトレーニングで近くの仁徳天皇陵の周りを必死に走っていた頃の記憶が蘇り、とても懐かしく、また感慨深い気持ちで会場へと向かいました。
そんな思い出深い場所で開催された今回のセミナーですが、「耳鳴りと治療法」というテーマで2時間お話しさせていただき、なんと70名もの方々にご参加いただきました。講演後には本当にたくさんのご質問を頂戴し、皆様の「聞こえ」に対する関心の高さと、耳鳴りに対する切実なお悩みを改めて実感する有意義な時間となりました。
今回は、当日セミナーでお話しした内容の中から、特に知っておいていただきたい「耳鳴りの正しい知識と対策」について、コラムとしてまとめました。
耳鳴りのメカニズムと「難聴」の深い関係
耳鳴りで悩まれている方にまず知っていただきたいのは、「耳鳴りの背景には、多くの場合『難聴』が隠れている」という事実です。
加齢などで耳の聞こえが悪くなると、脳は「もっと音を聞き取らなければ!」と感度を上げ、過剰に働くようになります。その結果、本来は鳴っていないはずの電気信号まで音として拾い上げてしまい、脳内で「キーン」「ジー」といった音が鳴っているように錯覚してしまうのです。 これが、耳鳴りが起こる主なメカニズムです。
治療の第一歩は「正しい理解」と「不安の解消」
耳鳴りは目に見えないため、「このまま一生治らないのではないか」「何か悪い病気ではないか」と強い不安を抱いてしまう方が少なくありません。 しかし、過度な不安やストレスは自律神経を乱し、脳をさらに興奮させて耳鳴りを悪化させるという悪循環を生んでしまいます。
まずは、「なぜ耳鳴りが起こっているのか」というメカニズムを正しく理解し、不要な不安を取り除くことが、治療に向けた大切な第一歩となります。
日常生活での対策:効果的な「音響療法」
耳鳴りの治療において、非常に重要なアプローチが「音響療法(TRT)」です。
耳鳴りは、周囲の音が少ない「静かな場所」や「夜寝る前」などに、より大きく気になりやすくなります。そのため、日常生活において「完全な静寂を避けること」が大切です。 テレビの音やラジオ、川のせせらぎなどの環境音を、気にならない程度の小さな音量で流しておき、常に豊かな音の中で生活することで、耳鳴りから脳の意識をそらす訓練を行います。
「補聴器」を用いた音響療法の有効性
そして、難聴を伴う耳鳴りに対して、非常に効果的なのが「補聴器を用いた音響療法」です。
聞こえにくくなった音を補聴器で補い、「本来聞こえるべき周囲の自然な音」をしっかりと脳に届けてあげます。すると、音を探そうとしていた脳の過敏な働きが次第に落ち着き、結果として耳鳴りが気にならなくなる(順応する)方が多くいらっしゃいます。 補聴器は単に「音を大きくする道具」ではなく、脳の過敏性を和らげ、耳鳴りを軽減するための重要な医療機器でもあるのです。

ご家族の皆様へのお願い
最後に、ご家族の皆様へお願いです。 耳鳴りや難聴は外からは見えないため、その辛さが周囲に理解されにくいという難しさがあります。どうか、「気のせいじゃないの?」とは言わず、ご本人の辛さに寄り添ってあげてください。
日常生活では、少しテレビの音量に配慮していただいたり、お話しする際は「ゆっくりと、太く低い声」を意識していただくと、ご本人は非常に聞き取りやすくなります。 「一緒に治していこうね」というご家族の温かいサポートと前向きな姿勢が、ご本人にとって何よりの励みになります。
耳鳴りや聞こえにくさは、「歳のせいだから」と我慢する必要はありません。 少しでも気になる症状がありましたら、お一人で悩まず、お気軽にご相談ください。
記事監修

Itsuki Kitayama
あわじ駅前クリニック 院長・医学博士
北山 一樹
医学博士(大阪大学)
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 認定専門医・指導医
日本アレルギー学会 認定専門医
日本喘息学会 認定専門医
日本音声言語医学会 音声言語認定医
大学病院・基幹病院にて小児から成人、一般的な耳鼻咽喉科疾患から悪性疾患まで幅広い診療を担当。外来・手術・研究の総合的な経験を有する。
音声の研究では、“粗ぞう性嗄声(ガラガラ声)”の音響学的なメカニズムとその発声機構を世界で初めて解明し、学術報告を行う。
また、難しくなりがちな医療情報をわかりやすく伝えることを目指し、医学専門デザイン事業STUDIO BIUMを運営。学会・医療機関のロゴ・配布資料・Webサイトなど、一貫した“わかりやすさ”を設計している。
学術実績など
