コラム
COLUMN

「最近、会話が聞き取りにくい」「片方の耳だけ聞こえづらい」「音は聞こえるのに、言葉がはっきりしない」。
こうしたお悩みに向き合うためには、まず、聞こえの状態を適切に把握することが大切です。難聴の程度や種類、左右の違い、言葉の聞き取り方などを確認することが、診断や治療、その後の支援につながります。
大阪あわじ駅前クリニック耳鼻咽喉科・小児科では、正確な聴覚評価を、耳の診療を支える基盤として大切にしています。
そのため、株式会社Oto Lab.様の支援を受け、聴覚検査の技術指導やスタッフ育成、検査環境・手順の整備に取り組んでいます。
この連携は、補聴器外来の立ち上げとともに、日々の耳鼻咽喉科診療に必要な聴覚評価の体制づくりを支えるものです。
当院の補聴器外来は、医師による適応判定から、試聴・調整、効果の確認、販売、購入後のフォローまで、院内で一貫して対応する体制を備えています。聞こえを調べ、その結果を実際の補聴器選びや調整につなげ、使い始めた後も支える。その診療を支えるのが、正確な聴覚評価です。

聴覚評価は、診断・治療・経過観察の出発点です
聞こえにくさには、耳垢の詰まりや中耳炎など、治療によって改善が期待できる原因もあれば、加齢などによる内耳の変化が関係する場合もあります。ご本人の「聞こえづらい」という感覚だけでは、原因や程度を判断することはできません。
医師は、症状や耳の診察所見に、聴覚検査の結果を合わせて、診療方針を考えます。検査は、主に次のような判断を支えます。
- 診断の手がかりを得る: どの音が聞こえにくいか、左右差があるか、音が伝わる経路のどこに問題が考えられるかを確認します。
- 対応を考える: 治療、補聴器などによる支援、さらに詳しい検査の必要性を検討します。
- 経過を確かめる: 前回の結果と比較し、聴力の変化や治療後の状態を確認します。
補聴器を検討する方も、
耳の病気の治療を受ける方も、
信頼できる聴覚評価が診療の土台になります。

正確な検査には、環境・手順・検査技術が必要です
聴覚検査には、音が聞こえたらボタンを押すなど、患者さんの反応をもとに結果を求める検査があります。そのため、機器の状態に加えて、周囲の音、装着方法、検査の説明、反応の確認などにも配慮が必要です。
例えば、純音聴力検査では次のような点が大切になります。
- 検査環境と機器の管理: 周囲の騒音の影響を抑え、機器が適切に作動する状態で測定します。
- わかりやすい説明: どのように反応すればよいかを伝え、理解できているかを確認します。
- 耳に合わせた測定手順: 気導・骨導の測定や、必要に応じて反対側の耳で検査音を聞いてしまうことを防ぐ「マスキング」を用います。
- 結果の確認と記録: 反応のばらつきや検査条件を確認し、次回の比較や診療に活かせるよう記録します。
[ASHA(米国音声言語聴覚協会)の純音聴力検査の指針](https://www.asha.org/policy/gl2005-00014/)でも、機器・検査環境、説明、測定手順、記録の重要性が示されています。
検査中に説明がわかりにくかったり、反応の仕方に迷ったりした場合は、遠慮なくお知らせください。患者さんが取り組みやすいように説明や方法を工夫することも、適切な評価につながります。
Oto Lab.から、聴覚検査の精度を支える支援を受けています
Oto Lab.は、聴覚検査の技術指導と人材育成、検査体制の構築、補聴器外来の運用などを支援する会社です。当院では、2026年9月の開院に合わせて支援を受け始めました。
[当院への支援内容](https://oto-lab.co.jp/case-study/)には、次のような取り組みが含まれています。
- 検査技術の指導: 純音聴力検査や語音聴力検査を中心に、検査の目的・原理と実際の手順を結びつけて学びます。
- 検査環境・手順の整備: 防音室や検査設備を診療に活かすため、機器の管理、検査条件、記録方法などの整理を進めます。
- スタッフの継続的な育成: 現地での指導とオンライン研修を通じて、疑問を相談し、検査や評価の考え方を共有します。
- 補聴器診療への活用: 検査結果、補聴器を着けた際の聞こえ、生活の中での実感を、調整や継続支援につなげます。
当院がこの支援を受けているのは、検査の手技や結果の見方を学び続け、チームで共有する仕組みを育てるためです。共通の手順に沿って検査を行い、判断に迷う点を相談できる体制づくりを進めています。
Oto Lab.との連携は、補聴器診療と、正確な聴覚評価を継続して行うための人材・環境・手順の両方を支える取り組みです。

聞こえは、複数の面から評価します
純音聴力検査:音の聞こえ方と、難聴の種類を調べる
低い音から高い音まで、どの程度の大きさから聞こえるかを、左右それぞれの耳で調べます。ヘッドホンなどを使う「気導」の測定に加え、必要に応じて骨を通して内耳に音を伝える「骨導」の測定を行います。
これらの結果は、難聴の程度や種類、左右の違いを把握する手がかりになります。治療前後の比較や、補聴器の調整にも用います。
語音聴力検査:言葉の聞き取り方を調べる
聞こえてきた言葉を答えていただき、どの程度正しく聞き取れるかを確認します。
音が聞こえる大きさが同じでも、言葉の聞き取り方は異なる場合があります。語音聴力検査は、会話での困りごとを理解し、補聴器で期待できる聞こえや支援の方法を考えるための情報になります。
症状・診察所見・生活上の困りごとも合わせて判断
検査の数値と、ご本人の困りごとは、必ずしも一対一で対応するものではありません。静かな場所と騒がしい場所、対面の会話と電話など、場面によって聞き取りやすさは変わります。
そのため、問診や耳の診察所見も合わせて評価します。必要に応じて追加の検査や専門医療機関との連携を検討し、結果の意味をわかりやすくお伝えします。
当院の特徴は、評価から診療・継続支援までつなぐ体制です
医療機関によって、検査や補聴器診療の体制は異なります。当院では、医師と言語聴覚士が連携し、検査結果と患者さんの状況を共有しています。認定補聴器技能者の資格を持つスタッフも在籍しています。
さらに、Oto Lab.の継続的な支援を受けて、検査の手順や評価の考え方を整えています。得られた結果を診断や治療の判断に活かし、補聴器が必要な場合には試聴・調整・購入後のフォローへつなぐことを大切にしています。
相談先を選ぶ際には、どのような検査を行い、その結果をどう説明し、次の対応につなげるかをご確認ください。

補聴器の効果も、検査と日常生活の両方で確かめます
適切な聴覚評価は、必要な音をどの程度補うかを考える基礎になります。さらに、調整後の補聴器がその方に合っているかを確認することも重要です。[日本聴覚医学会の「補聴器適合検査の指針」](https://audiology-japan.jp/hochouki-tekigou-kensa/shishin/)では、複数の方法で装用効果を評価する考え方が示されています。
当院では、スピーカーから音や言葉を出す音場での評価に加え、実耳測定を調整に活用しています。実耳測定は、細い測定用チューブを耳に入れて、補聴器を通した音が耳の中でどのように届いているかを調べる方法です。耳の形や大きさによる個人差も考慮しながら、調整の目標と照らし合わせます。
補聴器本体の特性測定や、聞こえの質問紙・問診による評価も含め、状態や調整の段階に応じて必要な確認を行います。

日常生活で試しながら、継続して調整
検査室での結果とともに、「家族の声が聞き取りやすくなった」「外出先では音が気になる」といった実感も大切にします。当院では、約2週間ごとの調整と、2〜3か月程度の試聴・調整期間を目安に、生活の中での聞こえを確認します。期間や通院間隔は、その方の状態に応じて相談します。
購入後も、使用状況の確認や点検、必要な検査・再調整を行います。聴力や生活環境の変化に合わせて、使い続けるための支援を行います。
聞こえの相談は、状態を確かめることから
聞こえが気になり始めた方、耳の治療後の変化を確かめたい方、補聴器を検討している方、すでに使っていてお困りの方も、ご相談ください。
受診の際には、「いつから」「どちらの耳が」「どのような場面で」聞き取りにくいかをお聞かせください。ご家族から見た変化も参考になります。
当院では、Oto Lab.の支援を受けながら、聴覚検査の技術と体制を整えています。正確な聴覚評価を、診断・治療・補聴器診療につなげ、地域の皆さんの聞こえを継続して支えること。 そのための取り組みを、日々の診療の中で続けていきます。
[当院の耳鳴り・補聴器外来についてはこちら](https://awaji-ent.com/hearingaid)
大阪あわじ駅前クリニック耳鼻咽喉科・小児科
院長 北山一樹
参考資料
- [Oto Lab.「Oto Lab.について」](https://oto-lab.co.jp/about/)
- [Oto Lab.「事例紹介:大阪あわじ駅前クリニック耳鼻咽喉科・小児科」](https://oto-lab.co.jp/case-study/)
- [ASHA「Guidelines for Manual Pure-Tone Threshold Audiometry」](https://www.asha.org/policy/gl2005-00014/)
- [日本聴覚医学会「補聴器適合検査の指針(2010)」](https://audiology-japan.jp/hochouki-tekigou-kensa/shishin/)
- [日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会「補聴器相談医の役割」](https://www.jibika.or.jp/modules/certification/index.php?content_id=29)
- [公益財団法人テクノエイド協会「認定補聴器技能者情報」](https://www.techno-aids.or.jp/senmon/hocho.shtml)
- [ASHA「Hearing Aids For Adults」](https://www.asha.org/practice-portal/professional-issues/hearing-aids-for-adults/)
- [米国国立聴覚・伝達障害研究所(NIDCD)「Hearing Aids」](https://www.nidcd.nih.gov/health/hearing-aids)
Flow
補聴器外来の流れ
1
初回受診(一般診察)
まずは耳鼻科の一般診察で、耳の病気の有無や、補聴器の適応があるかどうか検討します。
予約
不要
2
補聴器のための
詳しい検査
言葉の聞き取りの検査、耳管機能の検査、聴覚の過敏性の検査などを行い、補聴器の装用効果について検討します。
予約
必要
3
補聴器外来(初回)
ー補聴器の貸し出しー
補聴器の視聴をしていただいた後に、補聴器を付けた状態で聞き取りの検査を行います。
そして、いよいよ補聴器の貸し出しとなります。
予約
必要
4
補聴器外来(2回目以降)
ー補聴器の調節ー
補聴器の使用状況や状態を確認し、2週間に一度程度の調整(フィッティング)を行います。
※聴こえていない状態に長く慣れていた脳は、補聴器を通じて新たに届く音に少しずつ適応していきます。
はじめて補聴器を装用した直後は、「うるさい」「違和感がある」と感じる方も少なくありませんが、それは脳が“正しく聴こえる状態”を再学習している過程でもあります。音への慣れ方には個人差がありますが、一般的に2〜3ヶ月ほどかけて、徐々に快適な聴こえに変化していきます。
予約
必要
5
補聴器の購入
2〜3ヶ月間の補聴器の調節(フィッティング)を経て、ある程度補聴器が使いこなせるようになれば、視聴期間は終了となります。
ここで初めて、補聴器をご購入いただけます。
予約
必要
5
アフターサポート
ご購入後も、定期的に補聴器の使用状況や問題点を確認し、点検やうまく機能しているのかの検査も定期的に行います。
予約
必要
記事監修

Itsuki Kitayama
大阪あわじ駅前クリニック 院長・医学博士
北山 一樹
医学博士(大阪大学)
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 認定専門医・指導医
日本アレルギー学会 認定専門医
日本喘息学会 認定専門医
日本音声言語医学会 音声言語認定医
大学病院・基幹病院にて小児から成人、一般的な耳鼻咽喉科疾患から悪性疾患まで幅広い診療を担当。外来・手術・研究の総合的な経験を有する。
音声の研究では、“粗ぞう性嗄声(ガラガラ声)”の音響学的なメカニズムとその発声機構を世界で初めて解明し、学術報告を行う。
また、難しくなりがちな医療情報をわかりやすく伝えることを目指し、医学専門デザイン事業STUDIO BIUMを運営。学会・医療機関のロゴ・配布資料・Webサイトなど、一貫した“わかりやすさ”を設計している。
学術実績など





